ランチョンセミナー

日時:8月30日(金)12:45~13:45
主催:グラクソ・スミスクライン株式会社 メディカル・アフェアーズ

    

薬学領域が担うべき、これからの薬剤耐性(AMR)研究

中南 秀将 東京薬科大学・薬学部・臨床微生物学教室

 薬剤耐性(Antimicrobial resistance:AMR)に起因する年間死者数は、何も対策を講じない場合2050
年には全世界で1,000 万人に上り、がんによる死者数を超えるとの試算が報告された。これを受け、
本邦においても2016 年からAMR 対策アクションプランが実施されている。多くの医療従事者の努
力によって抗菌薬の使用量は減少傾向にあるものの、薬剤耐性菌の分離頻度はほとんど減少してい
ないのが現状である。また、AMR によって、これまでに開発された多くの抗菌薬の価値が低下し、
製薬企業による新規薬剤の開発意欲が著しく低下していることも大きな問題となっている。既存の
抗菌薬を守り、新たな薬剤を開発するためには、薬学領域の研究者が総力を挙げてAMR の問題に
取り組む必要がある。しかし、本邦では、微生物学や医療薬学以外の領域において、AMR の研究者
が極めて少ない。そこで、薬学領域の研究者が取り組むAMR 研究の一例として、当教室が臨床の
医師・薬剤師と共に実施してきた研究をAMR 対策アクションプランの強化取組事項に紐付けて紹
介する。

     

サーベイランスから見る薬剤耐性菌の動向と治療戦略

鈴木里和 国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター第1 室

 臨床的に薬剤耐性が問題となりうる菌種と抗菌薬の組み合わせは多種多様であるが、7 種類の薬
剤耐性菌感染症が感染症法上の届出対象となっている。また、厚生労働省院内感染対策サーベイラ
ンス(JANIS)事業では、主要な細菌の分離率や薬剤感受性を集計・公表しており、感染症発生動
向調査と合わせて、我が国の最も基本的かつ重要なナショナルデータである。
 2016 年にAMR 対策アクションプラン (2016-2020) が決定されたが、このとき示された成果指標、
特に耐性菌の割合に関する目標の多くは未達成であり、現在第2 期のアクションプラン (2023-2027)
に基づいて様々な対策が実施されている。一方、カルバペネム耐性のグラム陰性菌を適応菌種とし
た新規抗菌薬の上市が相次いでおり、グラム陰性菌感染症の治療戦略は転換期を迎えている。
 薬剤耐性菌は世界共通の問題である一方、国や地域によって薬剤耐性菌分離状況やそれらに影響
する医療体制が異なる。海外の状況を把握するとともに、我が国においてどのような対策が必要か
つ有効であるのかは、我が国のデータをもとに検討することが必要である。